東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

(コラム57)新型コロナウイルス流行時におけるこころのケア Part2

学習相談室

新型コロナウイルス流行時におけるこころのケア Part2

学習相談室 心理カウンセラー・谷 真美華

 

こんにちは。学習相談室心理カウンセラーの谷です。

4月も終わり、だんだんと暖かい日が増えてきましたね。

さて、今回も前回に引き続き、新型コロナウイルスの流行時におけるこころの健康とそのケアについてお話ししたいと思います。

前回は、「ストレスフルな状況下で起こり得る心理的反応と、ストレスに対する簡単な対処法」についてお伝えしましたが、今回は「不安への具体的な対処法・リラックス法」をいくつかご紹介します。

 

前回もお伝えした通り、このような非常事態において様々な不安を抱えることは、人間として当然のことです。むしろ危険な状態やストレスに対しておこってくる「不安」という気持ちは、私たちになんらかの警告を発し、自分自身を守るための機能を果たしているとも考えられます。

しかし、不安にうまく対処できないと、ますます不安が大きくなったり、他のことに手がつけられなかったりといったことにつながります。したがって、不安を感じた時には、「どうしよう」と不安に反応する(振り回される)より、不安とうまく付き合うことを心がけるようにしていきましょう。その具体的な方法としては、以下のようなものがあげられます。

 

 

[不安に対処するための5か条:APPLE]

Acknowledge(認める):不安を感じたら、それに気づき、不安を認める。

Pause(小休止):不安に対して、普段のような反応をしないこと。いったん止まって深呼吸する。

Pull back(一歩下がる):いつもの不安がしゃべり始めただけ、と自分に言い聞かせる。この先どうなるか分からず落ち着かない、何かしら答えが欲しい、といった不安な気持ちは役に立たないし、不安なのは、単にそう思う、感じるだけ。自分が心配した内容が、何でも必ず実現すると確信しないようにする。思考は何かの宣言でもなければ事実でもないので、それに引き込まれてしまわず、一歩引いて客観視してみる。

Let go(受け流す):不安な考えや気持ちを受け流す。不安はそのうち過ぎ去るもの。雲や泡になって流れ去っていくところを想像してみる。

Explore(探索):今に目を向ける。今この瞬間、すべては大丈夫だから。自分の呼吸や感覚を意識したり、周りを見回して、自分が今見聞きしているものや触っているもの、匂っているものを意識したりしてみる。そして、別のこと、すなわち、やらなくてはならないこと、不安に気付く前にやっていたこと、全く違うこと、などに意識を移し、じっくりと自分の意識を集中させる。

 

[呼吸を整える(呼吸法)]

呼吸法は、イライラしている時や緊張している時、不安で落ち着かない時などに効果があるリラックス法です。

緊張状態や不安状態にあると、身体もそれに反応して、自然と呼吸が早く(浅く)なっていることがあります。1分間の呼吸数を、吸って吐いてで1回として計測してみてください。目安として、平均は13~15回で、18回以上だと呼吸が早くなっていると考えられます。だいたい10回/分以下になるように、空気が鼻から入って口から出ていくのを感じながら、意識的にゆっくりと腹式呼吸をしてみましょう。この時、だいたい4秒で息を吸って7秒間止め、8秒間で吐くことを意識してみましょう。難しい場合は、それぞれ順に2秒、3秒、5秒を意識してみてください。腹式呼吸で呼吸が落ち着いてきたと感じたら、だんだん自然な呼吸に戻していきましょう。

 

[身体のリラックス法(筋弛緩法)]

筋弛緩は、意図的に筋肉を緊張させてから緩めることで、心身のリラックスに効果があります。身体の各部位に力を入れ、一気に力を抜く、という動作を繰り返します。

手→上腕→背中→肩→首→顔→腹部→足の下側→足の上側→全身

の順に、それぞれ10秒間力を入れたら一気に力を抜き、その感覚を20秒間感じましょう。だんだんと身体の緊張がほぐれてきます。力を入れている時も抜いた時も、その部位に意識を向けることが大切で、とくに力を抜いた時のじんわりあたたかくなる感じを味わいましょう。

*こうしたリラックス法の後は、リラックスしたことで少しぼーっとしてしまうことがあります。そういった場合は、腕を上にあげて伸びをしながら深呼吸をしてみてください。

 

[自分の不安をアウトプットする]

自分の頭の中で不安や心配事、思考がぐるぐると回ってどうしようもなくなっていると気付いたら、「自分は〇〇と感じている(考えている)」と頭の中で考えていることを口に出したり、紙に書いたりしてみましょう。自分の感情・思考から距離を置いて客観化することでそれらが整理され、具体的な対処法を検討することが出来るようになると考えられます。

 

[不安を断ち切るイメージをする]

一度不安や心配事が湧き上がると、それらはなかなか収まらず、むしろ膨れ上がってきてしまうことがあると思います。そんな時は、蓋を締めたり、ドアを締めたりといった動作で、頭の中にある不安の塊が大きくなっていくのを断ち切るようなイメージをしてみてください。塊自体を遠くに投げ飛ばしたりするといったイメージでもいいかもしれません。

 

[十分な睡眠をとる]

睡眠はメンタルヘルスとの密接な関連が示されています。不安な気持ちで調子のよくない時は、いつも以上に意識的に十分な睡眠をとるようにしましょう。

しかしながら、不安な時こそなかなか寝付けないこともあるでしょう。そんな時、「眠らなきゃいけないのに」と焦れば焦るほど、眠れなくなってしまいます。先程の呼吸法や筋弛緩法で身体をリラックスさせてみたり、寝る時の環境を整えてみたりしましょう。

それでも眠れない場合には、無理に寝ようとせず、一度ベッドから離れて読書をしてみるなど、眠くなるまで別の場所でしばらく落ち着いて過ごしてみてください。なお、スマホの操作やカフェインの摂取はもちろん、飲酒も睡眠の質にとって良くないので避けるようにしましょう。

 

 

今回は不安への対処法の一例をご紹介しました。これらの他に、親しい人に不安な気持ちを話してみること等も有効です。人によって感じ方はそれぞれであるように、不安への対処の仕方も合う/合わないがあると思います。いくつか試してみて、自分に合った方法を見つけてみてください。

 

カレンダー上ではGWが近いですね。今年は遠出などは出来ない状況ですが、自宅でできることを中心に、良い連休をお過ごしください。

 

 

[参考資料]

BBC News(2020)Coronavirus: How to protect your mental health

https://www.bbc.com/news/health-51873799

呼吸法

https://cocoromi-cl.jp/knowledge/other/selfcare/breath-control/

https://www.counselor.or.jp/covid19/covid19column2/tabid/507/Default.aspx

筋弛緩法

https://kenkousupport.kyoukaikenpo.or.jp/support/02/20151009.html

不安のアウトプット

https://blog.counselor.or.jp/business_p/f460

眠れない夜に取るべき行動

https://www.otsuka.co.jp/suimin/column01.html