東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

法科大学院概要

法曹養成専攻

法科大学院概要

 

1. 法科大学院の目標

東京大学が設置する法科大学院は、国民や社会に貢献する高い志と強い責任感・倫理観を持ち、国際的にも、また先端分野においても活躍できる高い水準の法律家を生み出すことを目標としています。単に司法試験に合格することを目指すのでなく、むしろ法実務の遂行や法律家のキャリアの発展において、東京大学の法科大学院での学習が血となり肉となって役立つような、長期的視野からの教育を行うことを目指しています。さらに、博士課程に進学し、日本の法学研究の将来を担う人材も育てます。

2. 東京大学法科大学院の法学教育の特色

東京大学の法科大学院における教育の特色は、次の3点にまとめられます。

第1は、「法律家としての基幹能力」の育成です。法制度を所与のものとして学生に吸収させるのではなく、制度の背後にまで立ち入って深く理解し対処できる理論的バックボーンを形成させることを重視します。「法のパースペクティブ」や「現代法の基本問題」といったこれまでの学部教育や他の法科大学院には見られない基礎法学的な科目を重視しているのも、そのためです。これによって、法的問題を鋭く発見し、自分なりの発想で解決する創造的な能力を身につけることが可能になります。

 

第2は、「国際的問題への対応能力」の育成です。現代社会における様々な面での国際化に対応することは、現代の法律家にとって必須の能力であるといえます。こうした認識に立ち、多彩な国際関係法科目・外国法科目を提供しています。TV中継を用いて海外のロースクールと共同で国際契約交渉を実践する授業、コロンビア大学やミシガン大学など有力ロースクールとの教員交換プログラムに基づくアメリカのロースクール教授によるアメリカ法の各種授業、アメリカ法などを対象とし英語で集中的に授業を行うサマー・スクールなどが行われます。さらに、東アジア法、ヨーロッパ法の授業やシンポジウムなど国際交流プログラムも行っています。

 

第3は、「多様な人材」の育成です。一方で、現代のビジネスの最先端で活動できるだけの能力を持ったビジネス・ローヤーを育成することは、東京大学の法科大学院が特に力を入れている点です。専門的・先端的知識の提供とそれを応用する能力の育成のために、倒産法・知的財産法・国際私法・労働法・租税法・経済法などのビジネス・ロー科目を選択必修科目にしています。他方、市民の悩みを理解する市民生活ローヤーの育成にも力を注いでいます。雇用関係法(労働法、社会保障法)、消費生活に関する法(消費者法)、生活環境に関する法(環境法)、少年非行に関する法(少年非行と法)など幅広い授業を提供して、社会に貢献しようという高い志を持った法律家の育成を目指します。

 

3. 法科大学院の組織

東京大学法科大学院は、東京大学大学院法学政治学研究科に属しています。本研究科に、総合法政専攻と法曹養成専攻の2つの専攻が置かれており、法曹養成専攻が法科大学院に当たります。研究科全体の組織については、研究科ホームページをご覧ください。

 

4. 法科大学院の教育組織

法科大学院担当教員

 

教員数

 

授業科目及び担当教員一覧は以下をご覧ください。

令和6(2024)年度授業科目及び担当教員一覧

 

5. 収容定員及び在籍者数

収容定員690名
入学定員230名(法学未修者概ね65名、法学既修者概ね165名)

6. 入学者選抜に関する基本的な考え方

入学者選抜は、募集要項に記載の方法で行います。

入学者選抜に当たっては、本法科大学院の目標として掲げる「法律家としての基幹能力」の育成、「国際的問題への対応能力」の育成、及び「多様な人材」の育成という観点から、募集要項の掲げる各審査対象資料に基づき、本法科大学院の法曹養成教育を受けるのに相応しい能力を有するかどうかを総合的に判定するものとします。選抜は、公平性・開放性・多様性に配慮して行いますので、本学法学部卒業者のみではなく、他学部・他大学の卒業生、理系をはじめとする多様な勉学経験や社会人としての貴重な経験を持つ者など様々なバックグラウンドを持つ学生が入学することを期待しており、受入予定人員の概ね3割が、社会人経験のある者及び理系その他他学部出身者が占めることを目標としています。

7. 教育課程を履修する上で求められる学識及び能力

7-1. 法科大学院入学後の学修に当たって求められる学識・能力

法律家として活動するための基礎となる問題発見能力、論理的思考力、文章作成能力、語学力等が求められる。法学既修者については、これに加えて、法律基本科目につき、法科大学院における発展的な学習に対応できるだけの基礎的な知識と理解が求められる。

7-2. 1年次が終了する段階で身に付けておく必要がある程度

法律基本科目につき、2年次以降における発展的な学習に対応できるだけの基礎的な知識と理解を修得しておく必要がある。

7-3. 2年次が終了する段階で身に付けておく必要がある程度

法律基本科目に関する知識および理解を深化させるとともに、法律実務基礎科目、基礎法学・隣接科目などについて幅広い知識と理解を修得しておく必要がある。

7-4. 法科大学院を修了する段階で身に付けておく必要がある程度

法科大学院の修了に必要な単位をすべて修得することによって、法律基本科目及び法律実務基礎科目に関する深い知識および理解、さらに将来、先端的法分野や国際的法分野で活躍するために必要な幅広い知識および理解を修得する必要がある。

 

8. 教育課程

法曹養成専攻では、約100科目の授業を開講しますが、これらは、以下の6つの科目群から成り立っています。

  • (1)法律基本科目基礎科目

    1年次に法律学の基礎を身につけさせるための「基本科目」シリーズ9科目から構成されています。

  • (2)法律基本科目応用科目

    2年次・3年次の学生を対象に、より高度で総合的な応用力を習得させるための授業を提供する「上級」シリーズ9科目及び「公法訴訟システム」「民事系判例研究」から構成されています。

  • (3)法律実務基礎科目

    実務家教員と研究者教員との連携・共同の下に、実務の基本的な流れを理解させた上で、法律基本科目において修得した法理論が実務においてどのように運用されるのかを体得してもらうことにより、実務と理論の架橋を図ることをねらいとするものです。

  • (4)基礎法学・隣接科目

    最先端の分野で生起する新たな法的諸課題に対応し、また、必要に応じて大胆な制度改革をも提言することのできる理論的なバックボーンをもった法曹となるために必要だと考えられる科目です。法を多面的・多角的に把握する能力の涵養をねらいとする「法のパースペクティブ」、及び、法の根底にある思想・哲学と現代法の課題とを接合する「現代法の基本問題」という二つの必修科目のほか、視野の広い法曹の養成を目指した多様な科目が開設されています。

  • (5)展開・先端科目(専門職大学院設置基準にいう選択科目に該当するもの)
    (6)展開・先端科目(専門職大学院設置基準にいう選択科目に該当しないもの)

    専門的・先端的知識と応用能力を必要とするビジネスローの優れた実務法曹を育成するためのビジネスローの各科目や国際的法律問題を取り扱う科目をはじめ、先端的・応用的な科目が多数開設されています。

これらの科目は、配当年次・学期が定まっていますので、必修、選択必修、選択の別を踏まえつつ、各自の関心に応じて、計画的に履修することが必要となります。

下記の法曹養成専攻(法科大学院)授業科目表(法科大学院便覧用)を参照してください。

法曹養成専攻(法科大学院)授業科目表(法科大学院便覧用)

  • (1)標準修業年限
    標準修業年限は3年間です。ただし、法学既修者として入学を認められた学生については、2年間での修了が可能です。
  • (2)修了要件
    法曹養成専攻を修了して「法務博士(専門職)」の学位を得るためには、修了に必要な単位を修得しなければなりません。これに加え、法科大学院の制度趣旨から、学生は広い範囲にわたって確実な知識と能力を修得することが必要だと考えられますので、必修科目及び選択必修科目を指定しています。
    具体的には、以下のような要件を充たして必要な数の単位を修得することが修了の要件となります。
  • 修了要件
    (i) 修了に必要な単位数

    修了に必要な単位数は93単位です。ただし、法学既修者として入学を認められた者は、1年次の必修科目のうち法曹養成専攻教育会議が指定する30単位について修得済みとみなされます。したがって、入学後修得が要求される単位数は、それぞれ以下のとおりとなります。

   法学未修者として入学を認められた者 93単位

   法学既修者として入学を認められた者 63単位

 

(ⅱ) 必修科目・選択必修科目とその単位数
[別表1 法曹養成専攻(法科大学院)授業科目表参照]

<必修科目 66単位>

(ただし、法学既修者として入学を認められた者については、1年次の必修科目のうち法曹養成専攻教育会議が指定する30単位-具体的には、基本科目憲法、基本科目行政法、基本科目民法1、基本科目民法2、基本科目民法3、基本科目商法、基本科目民事訴訟法、基本科目刑法、基本科目刑事訴訟法の単位- を修得済みとみなします。)

なお、上級商法1、上級商法2、法のパースペクティブ、現代法の基本問題は、それぞれの授業群の中から1科目を選択して履修することになります。

<選択必修科目>

(i)倒産法、知的財産法、国際私法、労働法、租税法、経済法、環境法、国際法のうちより4単位以上

(ⅱ)民事模擬裁判、刑事模擬裁判、民事弁護研究、民事事実認定論、法律相談クリニック、国際契約交渉、法と交渉、倒産処理研究、リサーチペイパーのうちより2単位以上

(ⅲ)国際法、国際人権法、国際経済法、国際租税法のうちより2単位以上(ただし、入学前に国際法科目を未履修の者は、国際法を履修することを強くおすすめします。)

(ⅳ)別表1 法曹養成専攻(法科大学院)授業科目表の⑤及び⑥の展開・先端科目群の中から 12単位以上

  • (1)進級制
    後に述べるような厳格で客観的な成績評価がなされることを前提として、十分な学修の成果を挙げていない学生については、次の年次に進級し、そこで履修すべき科目を受講することを認めない、いわゆる進級制限の制度を設けています。進級することができなかった学生については、その年次の履修単位(他研究科科目、サマースクールの単位を含む)はすべて無効となります。(ただし、2年次から3年次に進級できなかった学生が、1年次の必修科目とされている科目を再履修し修得した単位については、無効になりません。)したがって、次の年度にもう一度、その学年で履修すべきすべての科目を履修し直し、単位を修得しなければならなくなります。また、2年連続して進級することのできなかった学生は、学業達成の見込みのない者として、在籍資格を失うことになります。進級要件を以下に示します。
  • 各年次において必ず履修しなければならないものとされている必修科目の総単位数の3分の2以上(1年次20単位以上、2年次20単位以上)を修得しない場合、または次に定める方法で算出したGPAが1.8未満である場合は、次の年次に進級することはできません。
  • 【GPAの算出方法】算出対象の科目は各年次における必修科目(未受験も含む)とする。A+は4.5点、Aは4点、Bは3点、C+は2点、C-は1.5点、Fは0点に換算する。なお、未受験の科目は0点に換算する。GPA={(A+評価の単位数×4.5)+(A評価の単位数×4)+(B評価の単位数×3)+(C+評価の単位数×2)+(C-評価の単位数×1.5)+(F評価の単位数×0)}÷必修科目の総単位数なお、算出したGPAは、進級を認めない場合にのみ該当する学生に通知します。
  • 履修上限
    履修する個々の授業科目について十分な学修が行われることを確保するため、各年次について、履修登録可能な授業科目数(単位数)の制限を設けています。
    1年次 34単位
    2年次 36単位(又は42単位)*
    3年次 44単位
    * 研究科が認める場合、42単位が履修上限となります。

法科大学院の授業は、原則として、双方向的な形で行われます。そこでは、学生の主体的・能動的な取組みが期待されています。そのためには、授業時間以外での十分な学習、とりわけ予習が不可欠です。そして、授業での学習をふまえて、その成果を十分身につけるには、復習も欠かせません。一週間の限られた時間の中でこれらを計画的に、かつ集中して行うことが必要となります。

学生の成績をどう評価するかは、基本的には、授業への出欠や授業での質疑への応答、レポート等の提出が求められる場合にはそのレポート等の評価などの平常点と、学期末の筆記試験によって判定されます。ただし、授業科目や担当教員によっては、レポート等の提出をもって筆記試験に代えることもあります。

「プロセスとしての教育」を理念とする法科大学院においては、授業への出席は必須のことですから、欠席が度重なり、履修の実体を欠くと認められる場合には、当該科目の単位の修得が認められません。

授業の開始に先だって、各授業を担当する教員は、その授業について筆記試験を実施するか否かや、成績評価に当たってどのような要素をどの程度考慮するかについて、シラバス等で公示することになっています。

成績は、A、A、B、C、C及びFの6段階で示されます。C以上が合格で、Fは不合格となります。ただし、グループで行動することを内容とするなど授業の性格によっては、合格・不合格の2段階で評価することもあります。

A: 当該科目についてきわめて優秀な学習達成度を示している
A : 当該科目について優秀な学習達成度を示している
B : 当該科目について一応の学習達成度を示している
C: 当該科目について最低限の学習達成度を示している
C: 当該科目について最低限の学習達成度を示すが、なお相当の努力を要する
F : 当該科目についての学習達成度が著しく低く再履修させる必要がある

Aは受験した者の総数の概ね5%、AはAと合わせて総数の概ね30%というのが基準です。ただし、受講生が15名以内の授業には、この基準は適用されません。

成績について、C、C又はFの評価を受けた学生は担当教員に対して書面で説明を求めることができます。

所定の基準により修了時の成績優秀者を表彰します。成績優秀者として表彰されたことは、成績証明書に記載されます。

令和5(2023)年度[Aセメスター]成績分布
令和5(2023)年度[Sセメスター]成績分布

各授業について、履修した学生による授業評価を行い、教員の授業の改善に生かしています。法科大学院では、教育方法助言委員会を設置して、授業評価や教員相互の授業参観等に基づく教育方法の改善に努めています。

法学の研究を志す学生に対しては、法科大学院修了後、本研究科の総合法政専攻博士課程へ進学する途があります。法科大学院でも研究論文又はリサーチペイパーを指導教員の指導を受けて執筆し、これらを一定の要件のもとで進学に際しての審査対象とすることができます。

2023年度(2024年3月)修了者数
標準修業年限以内修了者数(2018~2022年度入学者)

司法試験合格者数(2019~2023年)

 

【在学中受験資格】

司法試験の法科大学院在学中受験資格について

司法試験の法科大学院在学中受験資格認定数等

進級者数・退学者数

法科大学院の授業は、主として、東京大学本郷キャンパス正門横の法学政治学系総合教育棟 で行われます。同棟に隣接する法4号館 の1階から4階には法科大学院学生専用の学生自習室があります。学生自習室では法科大学院学生専用のデータベースを利用することができます。

法3号館の法学部図書室や、東京大学総合図書館も利用することができます。法3号館の法学部図書室では法科大学院学生専用の図書やデータベースを利用することができます。

 
演習・討議室
 
学生自習室
 
第2学生自習室

法科大学院学生が学習を進める過程では、さまざまな困難に出会うことも考えられます。そのようなときに、各自が抱える学習上の問題の解決に役立てるために次のような相談体制が取られています。

 

  1. 法科大学院教育支援室
    法学政治学系総合教育棟2階の202号室に法科大学院教育支援室が置かれており、法科大学院学生の学習上の相談の窓口となっています。このほか、法科大学院教育支援室には事務スタッフが勤務しており、授業での補助教材の配付なども合わせて担当しています。
    学籍、科目履修、定期試験および単位取得状況等の教務に関する質問は、法文1号館2階にある大学院チームの窓口でしてください。
  2. 学習相談室

    学習相談室は、法学部・大学院出身の学習相談員と心理カウンセラーが互いに協力し、法学部学生の学習面の相談から将来の進路や日常生活上の悩みまで、幅広く相談に応じようとするものです。法科大学院学生については、心理的な悩みに関する相談のみ受け付けています。学習に関する相談は、上記教育支援室の方までお問い合わせください。

    学習相談室のご紹介

  3. クラス顧問
    1年次及び2年次には、年度初めにクラス編成がなされ、それぞれのクラスには、クラス顧問の教員2名が配置されます。

10-1.入学料及び授業料

  1. 入学料      282,000円
  2. 授業料  半期分 402,000円  (年額 804,000円)

10-2.入学料・授業料免除

  • 令和5年度の免除許可者は以下のとおりです。
  • 入学料全額免除    1名、 半額免除 9名
  • 前期授業料全額免除 53名、 半額免除 0名
  • 後期授業料全額免除 54名、 半額免除 0名

10-3.奨学金

  1. 東京大学法科大学院奨学金制度
    法律事務所による基金拠出に基づく奨学金制度があります。給与制で、月額8万円です。受給奨学生は、計25名です(令和5年度)。
  2. 独立行政法人日本学生支援機構の奨学金制度
    令和5年度の奨学生は、第1種(無利子)が100名、第2種(有利子)が38名です。

10-4.ローン

金融機関による法科大学院学生本人に対するローンがあります。法律家となった後に返還していくものです。本法科大学院が提携しているのは、三井住友銀行と第一勧業信用組合です。