東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

平成27年度進学のためのガイダンス

法学部

平成27年度進学のためのガイダンス

1.法学部の性格と特色

(1) 法学部の沿革と現状

法学部の起源は,1872年(明治5年)7月司法省設置の「法学校」と,1873年(明治6年)4月文部省設置の「開成学校 法学科」に求められる。その後,1877年(明治10年)4月に「東京大学」が創設され,そこに「法学部」が置かれた。そして1885年(明治18年)に,司法省の「法学校」の後身「東京法学校」と,「東京大学文学部 政治学及理財学科」とが,あいついで法学部に合併し,ほぼ原型が確定した。以後,今日まで一貫して日本における法学・政治学研究の中心として機能し,そのことに裏打ちされた高度の教育によって外国人を含む多数の優れた人材を育成し,司法・行政・政治・経済・言論報道,そして学問等の各界に卒業生を送り出してきた。昨年度末で,学部卒業生の累計は,6万名を超えている。
 1885年(明治18年)以後の大きな組織的変更を年代順に挙げると,1886年(明治19年)に,「法科大学」となり,法律学科と政治学科が置かれた。1908,1909年(明治41,42年)には,経済学科と商業学科が追加され,この後,1919年(大正8年)に,その両学科が経済学部となって独立した。1949年(昭和24年)には,新制の東京大学となり,1951年(昭和26年)に,従来の学科に代えて第1類(私法コース)・第2類(公法コース)・第3類(政治コース)の類別制をとった。1953年(昭和28年)には,新制の大学院研究科(はじめ社会科学研究科,のちに分かれて法学政治学研究科)が設置された。そして,1991年(平成3年),教員は原則として法学政治学研究科に所属し,学部を兼担する等の「大学院重点化」の改革がなされた。また,国立大学法人となった2004年(平成16年)には,法学政治学研究科に「法曹養成専攻」(いわゆる「法科大学院」)が設置され,同時に,経済学研究科との連携によって,公共政策学連携研究部・公共政策学教育部(いわゆる「公共政策大学院」)が設立された。これは,組織上,学部とは一応別個のことではあるが,法学部の教育に直接・間接に大きな関連を有する大改革であり,法学部の歴史にとっても重大な意義を有している。2014年(平成26年)には、類別コースを第1類(法学総合コース)、第2類(法律プロフェッション・コース)、第3類(政治コース)に再編し、2017年度(平成29年度)進学生から適用することを決定した。

 以上の沿革を経る内に,1877年(明治10年)にはわずか20名だった学部生の数は数十倍に増え,それに対応して教員数と教育研究の対象分野も増加し,今もさらなる充実が図られている。その研究水準は,来訪する外国人研究者が一様に評価するように,国際的に見ても極めて高い。
 施設としては,教室・研究室・事務室・学生自習室・学生ラウンジ等の他,法学・政治学の専門図書館としては世界屈指のコレクションを有する図書室があり,蔵書約76万冊,(過半数が洋書である),国内外の雑誌約5900タイトルが納められている。学生は,総合図書館以外に,この法学部図書室も手続きを踏めば利用できる。また,附属施設である,外国法令判例資料室,近代日本法政史料センター(明治新聞雑誌文庫)は,国内でそれぞれの分野における最も充実した資料のコレクションを有し,広く利用に供している。学生ラウンジにはネットワーク端末が置かれ,自由に利用できるようになっている。なお,法学部には,全国でも例の少ない学部独自の学習相談室が設置され,学習の支援を行っている

(2) 教育の理念

少なくとも近代社会においては,法と政治は不可欠である。しかも,両者は相互に相互を支えている。政治が法を定め,実現する。そして,法が政治を形造り,導く。両者の基礎には社会があるが,その社会自体が法と政治抜きでは成り立たない。そこに,法学と政治学が対をなすものとして研究され,教育される根本の理由があり,また,法学部の3つの「類」が,後述するように高い壁で仕切られた「学科」ではないことの根拠がある。
 法学部学生は,司法・行政・立法という,巨大にして複雑な,そして人々の生活・人生・生命に直接かかわる重大な現象を,多種多様な角度から学ぶ。そして法学的智恵や政治学的識見の基礎を,ある程度はその双方を,我が物とすることが期待されている。
 それは,法科大学院(本学のそれとは限らない)に進学して,将来専ら法律家として生きていこうと考えている学生についても同じである。すなわち,法学的智恵を身に付け,法律家らしく思考し議論できるようになるためには,まず,基幹的なものから先端的なものまで,広く具体的な法体系を知り,それを支える理論を理解しなければならない。しかし,それだけでは優れた法律家となるには充分でない。現行の法体系の基礎には古代ローマにまで遡る智恵の蓄積がある。一方で日本独特の史的背景もある。それゆえ,歴史的な理解も必要である。また,日本法の特質は外国法との比較によって明らかとなる。さらに現代では外国法との接触は日常化している。したがって,比較法的な理解も重要である。さらに,法を基礎付ける哲学的・思想的なものへの理解も望ましい。そして,そもそも法と政治・社会との間の連関と相剋に全く無知であってはならない。経済学の基本も心得ていることが望ましい。このような観点からして,法学既修者として法科大学院に進学することを希望する学生も,狭い意味での実定法学のみをひたすら学習することは,かえって望ましくない。優れた法律家になるためには,広い堅固な基礎が必要であることを十分に自覚して欲しい。
 主に政治学を学ぼうという学生においても同様である。現代政治の理解に加え,歴史的・比較的・理論的な広がりと深みの中にそれを置き,さらに法学と経済学の基礎を学ぶことが必要である。そうした多角的な学習によって,単なる党派的な思いこみではなく,かといって単にシニカルな政治評論ではない,冷静な政治学的思考が身に付くのである。公共政策大学院に進学して,将来,公務員などとして政策にかかわる職業に就こうと考えている学生も,東京大学の公共政策大学院が,法学・政治学・経済学を3本の柱としていることの意味に十分思いを致してほしい。
 なお,法学的智恵や政治学的識見は,国家組織だけでなく,ある程度大きな組織を運営し,導き,改革するには,実際上無くてはならないものである。それが,世界中で,法学・政治学を学んだ人々が,法と政治・行政以外の諸分野でも往々指導的役割を果たしていることの理由であろう。現に,この法学部の卒業生も,上述のように,狭い意味の法律家・行政官・政治家になるだけでなく,国内外の広い分野で活躍しており,これからも-法科大学院・公共政策大学院の課程を経ると経ないとにかかわらず-活躍することであろう。多角的な学習は,その点からも意義を有している。

(3) 授業のあり方

法学部では,このような理念に対応して科目が展開され,卒業に必要な単位数が定められている。学生は,必修・選択必修の指定に従って中核的な科目は必ず体系的に履修しなければならない。しかし,それ以外は,多彩に用意された科目の中から自分の関心・進路の志望等によって自由に選択し,個性的に自分の力を伸ばしていくことが可能となっており,それが期待されている。
 授業の方法は,主に講義と演習との二つによる。講義は,様々な規模の教室で教員が語りかけるというのが基本である。その際,資料や種々の教育機器が利用され,対話的な方法が併用されることもある。講義は,体系的な知識を身に付けるにはもっとも有効であり,予習・復習によってその効果はさらに著しく高まる。授業時間外の自習は必須である。演習は,少人数で一つの机を囲み,特定の資料や課題をめぐって報告し,討論するというのが基本である。その演習の主題について,教員や友人と対話しつつ深く学ぶ機会であり,同時に,文献を精読し,自ら調査し,発表し,質問し,回答し,議論するといった能力を磨く機会でもある。演習によっては,さらに学術的な小論文を書く訓練や交渉術の訓練も兼ねる場合もある。したがって,講義以上に授業時間外での自主的な学習が重要である。講義とは異なる利点を持つ演習に参加する機会をすべての学生諸君に提供するため,2006年度進学者からは,演習2単位を必修としている。
 また,通常の講義以外に毎年相当数の特別講義が開設される。これは特定の先端的な課題について,学部の教員もしくは学部外から招聘した講師によって講義されるものである。自己の関心に応じて積極的に受講することを勧める。

(4) 法学部進学および卒業

法学部における進学・卒業等は,東京大学法学部規則の規定による。

 法学部に進学した学生は,2年間の修業年数を終え,履修した所定の単位(2016年度〔平成28年度〕までの進学生については90単位、2017年度〔平成29年度〕以降の進学生については80単位)以上の科目の試験に合格したときに卒業する。ただし,その中には,各類の必修科目の全部と選択必修科目中の必要な単位が含まれていなければならない。そして,必修・選択必修以外は,上記所定の単位に達するまで選択科目によって満たさなければならない。
 また,随意科目として,他の学部の授業科目を履修することもでき,所定の単位(2016年度〔平成28年度〕までの進学生については12単位、2017年度〔平成29年度〕以降の進学生については10単位)を限度として,選択科目に代えることができる。これによって,学生はその関心に応じて本学で展開されている多種多様な学部科目を履修し,卒業に必要な単位とすることができるわけである。ただし,履修に際しては,法学部長及び関係学部長の許可を受けることが必要である。
 卒業時期は,原則として毎年度の学年末であるが,2年間の修業年数を含め所定の卒業資格を満たした場合には,年度途中でも卒業を認めるための制度が設けられている。
 なお,法学部には学士入学の制度がある。これにより,本学他学部の卒業生も,他大学等の卒業生も,入学試験に合格すれば,法学部に入学できる。その入学者選考では,筆記試験(総合問題と外国語)及び口述試験が課せられる。この制度によって入学した者の在学期間は2年であるが,専門科目の講義が教養学部第2学年のSセメスターに開始されることなどのため,2年で卒業することは事実上かなり困難である。なお,入学者には法学部の専門教育を履修するだけの学力が要求されるから,その入学試験はきわめて厳格であり,例年,合格者は僅少である。
 法学部の卒業生にも学士入学の制度があり(いわゆる本学士入学),ある類の卒業生は,入学試験に合格すれば,他の類に入学することができる。この場合,在学期間は1年である。

(5) 法学部の類制度

法学部には,すでにふれたように,2016年度(平成28年度)までの進学生については第1類(私法コース)・第2類(公法コース)・第3類(政治コース),2017年度(平成29年度)以降の進学生については第1類(法学総合コース)、第2類(法律プロフェッション・コース)、第3類(政治コース)の各類が置かれ,学生はいずれかの「類」に所属する。それぞれの類について,後掲の表にあるような必修科目,選択必修科目が定められている。類別と将来の職業選択には,のちにみるように,若干の対応がみられる。したがって進学に際して類を選ぶにあたっては,どのような学習に重点をおくか,将来の職業をどうするかなどを考慮して決定することとなろう。
 しかし,重要なことは,「類」は他学部の「学科」のようにはっきりした隔壁で区切られたものではない点である。科目表を注意深く検討すれば分かるように,履修の仕方によって,どの類に所属しても内容上きわめて似た学習ができる仕組みになっている。将来の職業についても,若干の対応関係があるにとどまり,どの方向に進むにしても,それ程大きな支障はない。また各類に定員がなく,進学のときに志望の類を自由に選択できるのみならず,進学後も,学部の指定する期間内に「転類願」を提出すれば,翌年度以降他の類に転ずることができることになっている。その意味で,何よりも在学中打ち込んで学習したい科目への学問的関心を中心に類を選ぶのがよいだろう。

 

2.法学部のカリキュラム

(1) 前期課程での学習への要望

法学部への進学に関しては,前期課程の特定の科目が指定されてその履修が進学のための要件となるというかたちがとられていない。したがって,進学希望者は後期課程進学のための一般的要件を満たすことを要求される以外には,自由に履修計画を立てることができる。
 このことには,2つの意味がある。第1に,法学政治学という学問自体が,現代社会と国家に関わる諸問題を広く対象とするものであるため,一定の関心にしたがって行われたものであれば,およそあらゆる分野での学習が無駄にならず,進学後の学習の基礎になり得る。しかし第2に,法学部はただ漠然と「幅広い教養」を身につけることを進学者に期待しているのではない。法学部での学習は,多くの専門科目に分化しており,科目相互が有する関連は一見して自明ではない。そして,これら異なる科目をただ闇雲に,あるいはただ資格試験に必要だから,というだけの動機付けで勉強するのは,極めて非効率的である。「自分が」これらの科目を「なぜ」勉強するのか,という文脈ないし目的意識を,駒場での学習の過程で鍛えてあることが,法学部の提供する様々な授業を充分に消化する上で,是非とも必要となる。駒場での履修科目選択に高い自由度をもたせていることの意義は,こうした独自の目的意識の明確化と連動した学習を容易ならしめることにも存する。
 日本語のものであれ外国語のものであれ,テクストを正確かつ厳密に読解する能力,そこから得られた知見を自身の現実世界における問題関心につなげ,思考を展開する能力,そうした思考について日本語であれ外国語であれ口頭で議論する能力,これらはいずれも,法学部に進学する上で鍛えてあることが望まれるものである。しかしこうした能力も,上記の如き目的意識による方向付けを欠けば,その意義は半減する。
 法学部が進学希望者に求めるのは,一方でこれらの能力を高める努力であり,他方で学習へ向けての自分独自の目的意識の鍛練である。法学部としても,そのための機会を総合科目等の形で提供する。

(2) 授業科目の学期配当

法学部の授業科目がどのように学期配当されているか,それらの単位数はどうか,またそれらがどの類で必須とされているか,などを表示すれば後記の表のとおりである。この学期配当は,科目の性質・関係等を考慮して,段階的な履修が無理なく進んでいくように配慮されたものである。本郷に進学したあとの第3学年Sセメスターから第4学年Sセメスターまでは各類ともかなり密度の高いカリキュラムになっており,相当にきびしい勉学生活であることを予期しておかねばならない。なお,授業科目の配当学期等については,場合によって変更されることがあるので,事前の告知に注意してほしい。

授業科目配置学期一覧表(2016年度[平成28年度]までの進学生)※

授業科目配置学期一覧表(2017年度[平成29年度]以降の進学生)※

備考

1.○に囲まれている数字は1週の講義回数を示し,それ以外のものは単位数を示す。
 2.「科目分類」は成績優秀者表彰のための科目の分類を示す。(法学部成績優秀者表彰規則第2条参照)。
  「共」は共通科目,「実」は実定法系科目,「基」は基礎法学系科目,「政」は政治系科目,「経」は経済系科目をそれぞれ示す。

(3) 演習

2006年度進学者から演習2単位が必修となったため,法学部在学中に少なくとも1つの演習を履修しなければならない。法学部の授業の多くは,多数の学生が一方的に教員の講義を聴くという形をとっているから,少人数の参加者からなる演習に出席して,討論に加わり,学習を深めることはとくに意義のあることであり,それによって学問への興味を増し,教員との接触も得られるであろう。
 毎年ほぼすべての教授・准教授が,趣向を凝らした多種多様な演習を開講している。学生は、その中から関心のあるものを一学期に一つ選択して参加を申し込み,教員の許可を得て履修することになっている。その年に開設される演習の内容の概要は,学年はじめに発表される。応募者が多い場合には,希望した演習への参加が許可されないこともあるが,他方では追加募集する演習もあり,再申込みをすることができる。

 

3.大学院

大学院法学政治学研究科は,主として研究者養成の目的のために用いられてきた。また,1991年度からは,研究者になるのではなく職業上の必要のため,特定の領域について専門的な勉強をする機会を提供する修士課程(専修コース)が置かれてきた。
 同研究科および法学部は,学問の進展,国内外の諸状況(国際化・グローバル化の一層の進行,司法制度改革の進行,国立大学の法人化等),そして学生の勉学の状況等を踏まえて,教育内容と組織にかかわる大規模な改革を行うべく,様々な検討を重ねてきた。こうした取り組みの結果,これまでの「公法専攻」,「民刑事法専攻」,「基礎法学専攻」,「政治専攻」の4つの「専攻」(学部における「学科」に当たる)を,2004年度に,「法曹養成専攻(法科大学院)」と「総合法政専攻」の2つの「専攻」に再編成すると共に,大学院経済学研究科と共同で,両研究科の外に「公共政策学教育部(公共政策大学院)」を設置した。また専修コースは,新たな大学院制度の誕生と共に発展的に解消された。
 こうした改革の結果,法学部卒業生は,学部卒業の時点で社会に出ていく者,法科大学院(法曹養成専攻)を経て法律専門職となることを目指す者,公共政策大学院(公共政策学教育部)を経て社会に出ていく者,これらの大学院または総合法政専攻を経て研究者になることを目指す者等にその進路が分かれることとなった。

(1) 法科大学院(法曹養成専攻)

司法制度改革審議会の意見書に示された法科大学院の目的・理念を受けて,国民や社会に貢献する高い志と強い責任感・倫理観を持ち,先端的分野や国際分野でも活躍しうる,これまで以上に優れた法律家,傑出した法律家を生み出すことを目標とし,それにふさわしい教育を行うために,2004年度に,法科大学院が創設された。
 東京大学では,法科大学院は,法学政治学研究科内の法曹養成専攻として設置されている。この課程は,3年間の課程であるが,学部段階で法学を学んだ法学既修者は法曹養成専攻の2年次に入学し,2年間で課程を修了することができる。1学年の学生定員は2010年度からは240人であり,学部段階で法学を学ばなかった者を想定した法学未修者の受け入れは,さしあたり75人としている。
 カリキュラムについて,1年次では,法学未修者用として,基本的な科目を履修させる。2年次からは,法律学の基本的な理解を深め定着させる授業,先端的・展開的な法分野の授業,基礎法学ないし隣接科目的な授業,実務への橋渡しとなる授業を実施する。既修者は,ここから学び始めることになる。法科大学院の授業は、原則として、双方向的な形で行われるため、授業時間以外での十分な学習、とりわけ予習が不可欠である。また、英語による授業も実施されている。

(2) 公共政策大学院(公共政策学教育部)

公共政策大学院は,広義の「政策」の作成・実施・評価にかかわる高度の職業人(公務員・国家公務員・ジャーナリスト・NGO職員等)の養成を主目的とする。米国のSchool of International and Public Affairs, School of Public Policy, School of Government等におおむね相当するものである。原則として2年の修業年限であり,1学年の学生定員は,110名である。公共政策大学院は,経済学研究科と連携して設けられた。
 カリキュラムについては,政治学,法学および経済学の3つのディシプリンを基礎に,政策の実務に関わる応用力を養えるよう構成されている。英語による授業も多数展開するとともに,政策の具体的なプロジェクトに関わる形での教育も積極的に展開している。

(3) 研究者養成を目的とする従来型の大学院(総合法政専攻修士課程)

総合法政専攻修士課程は,理論的,思想的あるいは地域研究的な法学・政治学の専門研究者の養成を主目的とする。

 

4.研究生活に進む方法

3で述べた大学院制度改革に伴い,研究者となり,将来の学界を担う人材の養成のされ方も多様化することとなった。すなわち,専門の法学研究者,特に実定法学の研究者になろうとする者は,法科大学院(法曹養成専攻)修了を経て,また公共政策大学院(公共政策学教育部)の中心となるような分野の専門研究者になろうとする者は,その課程を経て,総合法政専攻博士課程に進学するというのが原則的形態である。また,こうした課程を経ることが研究者養成にとって必要・最善では必ずしもない分野については,当初より専門研究者の養成を目指した教育を行う総合法政専攻の修士課程を経て,同博士課程に進学するのが通常の形態である。
 法学部では,従来,研究者養成の制度として,大学院とならんで助教制度を併用してきたが,この制度は,上述した大学院改革の実施と連動して変更されることとなった。現在は,学部卒業段階で助教として採用することは原則として行わず,上記のようにして博士課程への進学要件を充たした者につき,研究者養成のための助教制度を活用している。

 

5.就職

法学部を卒業する学生の大部分は,専門的研究者の道を選ぶわけではなく,いわゆる実社会に出ていき,実務の世界で活躍している。すなわち,公務員となって行政や外交に,司法研修所を経て法律専門職に,製造・金融・商事などの会社に,さらにはジャーナリズムの世界にと,その進出する分野は広く各方面にわたっている。例外的には文芸など芸術の分野で活躍している人もいる。政府や企業において,やがて管理・経営の職務にたずさわる場合が少なくなく,また,のちに政治の世界に入っていく者も相当数みられる。職業の選択は誰にとっても人生の重大事であるが,法学部の場合は,この重大事について慎重に考える時間的余裕を与えられ,自らに適する道を広い範囲から選びうるといってよい。また,法科大学院,公共政策大学院などの新たな専門職大学院制度の設置により,選択肢の多様性はさらに拡大されている。

就職先調(2014年3月卒業生)