東京大学大学院法学政治学研究科・法学部 グローバル・リーダーシップ寄付講座(読売新聞社)



河原節子氏 講義概要

「外交における人道支援 」

  • 第一回:外交としての人道支援をどうみるか
     人道支援は、そもそも「人として」なすべき支援であり、民間団体や国際機関等、政府以外の中立的な機関が実施する活動として始まった。しかし今や日本を始め、多くの国の政府が人道支援に積極的に参加している。また、ドナー国、NGO,国際機関による人道支援に関する多くの制度やガイドライン等が策定された。  人道支援は、政府機関・非政府機関の双方により、どのように実施され、連携しているのか。それぞれの違いは何か、現在の課題は何か。そして、「国益」の追求が究極の目的である外交と、純粋な「人としての」暖かみに基づく人道支援は合致するのかを考える。

    第二回:人道支援における軍の活用(リスクとポテンシャル)
     スマトラ沖津波、ハイチ地震、東日本大震災等、近年の大規模自然災害時において軍の能力が活用される機会は多い。諸外国においては、紛争による人道危機の際も、軍が人道支援に関与することも多い。  人道支援において、軍はどのような考え方に基づき、どのような役割を果たしているのか。日本及び諸外国の法制度、国際的なガイドライン等を踏まえ、人道支援における軍の活用の適否(リスクとポテンシャル)、あるべき姿をさぐる。

    第三回:東日本大震災と海外からの支援受け入れにおける課題
     東日本大震災では、日本が多くの国から緊急人道支援を受け入れる初めてのケースとなった。東日本大震災に限らず、過去の大規模自然災害時においても、支援をする側と受け入れる側の立場の違いによるミスマッチ、迅速・効果的な支援の提供に対する様々な障害が問題になってきた。これまでもグローバルな制度の改善がなされているが、十分ではない。  日本のような先進国、ハイチのような発展途上国が直面する課題は大きく異なり、必要な改善策も異なる。各国内、地域毎、そして世界的にどのような制度改善が必要か、ハイチ地震や東日本大震災の経験・教訓を踏まえつつ考える。