東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

コラム4:『ストレスと対処行動』

学習相談室

コラム4:『ストレスと対処行動』

「ストレス」という言葉は、日常会話の中で頻繁に出てきます。うれしいことではありませんが、皆さんにとっても身近な問題の一つなはずです。ストレスの原因となる刺激をストレッサーと言いますが、ストレスは、ストレッサーの種類に応じてビタミンや栄養素の欠乏からくる生物学的ストレスと、不安や抑うつ感、人間関係における不適応などによって生じる心理的ストレスとに分類されます。一般的に「ストレス」というと、後者の心理的ストレスのことをさして用いられていることが多いようです。

 

ストレス状態が持続すると、抵抗力の低下、体温や血圧の変化、筋肉の緊張、消化器粘膜のただれといった様々な身体的症状が出現します。同時に、心理的な問題として、集中力の低下、孤立感、イライラ感、消極性の増大、落ち着きのなさといった行動や思考の障害が認められるようになります。心理的ストレスのモデルによると、ストレッサーがあれば必ずストレス反応が出るという訳ではないとされます。その刺激が自分にとってどの程度脅威的であるかについての評価をおこない、さらには、その脅威に対して自分が対処できるかどうかについての評価をおこなった結果、対処不可能であると判断された場合にストレス状態が発生するとされています。

 

したがって、ストレス状態に陥らないようにするには、「対処行動」を身に付けることが重要であるということになります。問題に対処する際には、次のようなことを念頭に置くといいと思います。まず、自分がストレッサーを感じたら、どのような状況なのか、そして、ストレッサーに対してどのように振る舞っているのかを意識するようにします。次に、完璧に問題を解決しようとするのではなく、さしあたって自分には何ができるかということについて具体的な対処の方法を考えます。その方法をとった場合の結果について予測し、どの程度確実にできるかを見積もります。その上で、できると判断した方法を行動に移します。このスモールステップの繰り返しで、問題に対処していくという方法は、単純ですが効果がある方法です。特に、完璧に問題を解決しなければならないという完全主義に陥っている人にとって、こういう方法は見落とされがちなものです。

 

現代社会に生きている皆さんにとって、ストレッサーのない生活はありえないはずです。学生生活を送っている中で、様々な場面でストレスを感じることがあると思います。そんな時に、今回紹介した方法をためしに使ってみてはいかがでしょうか。

 

(文章:高野)