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コラム11:高層ビルの光は何に見える…?

私は、とある地方都市の出です。東京で暮らすようになって、木々や星空のかわりにそびえ立つ高層ビルや、ムンとした人臭さに慣れるまで、ずいぶんとかかったように思います。中でも、夜になると黒い空に不気味に蠢く高層ビルの赤い光は、長いこと気持ちが悪く、極力見ないようにとしていました。ところがある日、友人と夜にドライブをしていたら、その友人がビルの赤い光を見て、「あ、王蟲だ。」と言ったのです(皆さんの世代は知っているでしょうか?風の谷のナウシカというアニメに出てくる、非常に神秘的な生物です。蒼い目をしているのですが、怒ると赤い目になります)。私にとって、嫌悪の対象でしかなかったその光は、たちまち好きなアニメの世界へと誘うシンボルとなりました。今では私は、夜の高層ビルの光を見ることが楽しみでなりません。

 

人には、それぞれ異なった物事の捉え方というものがあります。暗闇に光る赤い光を、私のように漠然と気持ち悪いものと捉える人間も居れば、何か空想上の素敵な生物になぞらえる人も、全く何も感じない人も居るでしょう。見ている対象は同じはずなのに、捉え方、即ち情報処理の過程における認知の仕方が異なるだけで、ネガティブな感情が生じる場合とポジティブな感情が生じる場合があるのです。特にネガティブな感情ばかりが生じるような認知のパターンを持っている場合、うつになりやすくなるわけです。そのパターンはいくつもあり、“認知の歪み”と呼ばれます。ほんの少し例を挙げてみましょう。

 

*べき思考:自分・他者を含め様々な事象に対し「こうあるべき」という頑固な考えを持つ。要求レベルが高くなり、満たされないことが多くなる。・・・全ての人間に好かれるべきだ、全部優を取るべきだ、等と思っていませんか?

 

*全か無か思考:物事を0か100か、全か無か、という極端なカテゴリーに分類してしまう。・・・一つでも理解できない箇所があったなら、あぁもう全部がダメだ、と思ったことは無いですか?

 

他にも、過度の一般化、拡大解釈と過小評価、感情的な決めつけなど多々あります。これらは、誰しも大なり小なり持っている要素かもしれませんが、囚われてしまうと苦しみばかりが生まれてくる思考であること、ざっと見てお気づきではないでしょうか。そして、もともとこのようなパターンを持っている人は、これまでずっと繰り返して来ている訳ですから、自身ではなかなか気づかなかったり、抜け出せなかったりするものです。ですが、このような思考パターンを持っていることに気づき、変化させるように努力してみたり、他の視点を取り入れるようにしたりすることで、随分と楽になるはずです。そのような時、周りにいるポジティブ思考に見える他者に、ものの見方を具体的に聞いてみるとか、本や映画の登場人物の認知に着目して、ヒントにしても良いかもしれません。果たしてこの思考は正当なのだろうか、確率はどの程度なのだろうかと吟味するなど、自らの工夫により思考を転換できる場合もあります。そして私の王蟲の話のように、何気ない、誰かのことばで、するりと新しい視点が入ってくることもあります。皆さんも、自分自身の認知を見つめなおしてみては如何でしょうか?そして、他者のことばに耳を傾けてみては如何でしょうか?もしかすると、今よりもネガティブな感情を抱かずに生きて行くヒントが見つかるかもしれません。

 

(文章:束原)

学習相談室