東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

法学部卒業生・大学院修了生の皆様へ

卒業生・修了生

卒業生・修了生の皆様へ

 

 2022年4月より3年間の任期で、法学政治学研究科長・法学部長を務めることになりました。前任の大澤裕教授が研究科長・学部長を務めた2019年4月からの3年間の大半は、パンデミックの未知の状況に直面して、オンラインによる研究教育の体制を急遽整備し、状況に応じて臨機に、模索しつつ種々の措置をとらなければならない難しい時期でした。今後は、引き続き新型コロナウイルス感染症の状況に注意しながら、研究教育において、対面によるコミュニケーションを復活させつつ、オンラインをさらに有効に活用し、新たなスタイルを築いていくことが課題となります。依然として先が見通せない中で、中長期的な展望を持たなければならない研究科長・学部長という重責を担うには、能力・経験とも不足しておりますが、前任者にも増してご指導、ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

 
 東京大学大学院法学政治学研究科・法学部(以下、「本研究科・学部」といいます)の歩みは、1873年に法学科が置かれた東京開成学校と東京医学校との合併により、1877年に東京大学が創設された際に、法学部が設置されたことに遡ります。以来、折々に組織体制および名称の変更はありましたが、一貫して各界に有為の人材を輩出してきました。学部の卒業生の数は、2022年3月までの累計で69,404人(旧制29,210人、新制40,194人)に及びます。
 法学部生の進路は、これまでも多彩でしたが、近時ますます多様化しており、また、国際化・グローバル化に対応する教育がますます求められるようになっています。そのため、2017年より、学部のコース制・カリキュラムを大きく改革しました。1949年の新制大学発足時に遡る、第1類(私法コース)、第2類(公法コース)、第3類(政治コース)という区分が、改革により、第1類(法学総合コース)、第2類(法律プロフェッションコース)、第3類(政治コース)に改められ、卒業単位数と必修科目が削減されました。留学先で取得した単位を卒業単位に算入するなどの制度とともに、学生が主体的に幅広く、海外留学などの学修の道を選択できるようにする趣旨の改革です。授業科目については、外国語で行われ、または外国語の文献を用いて行われる講義・演習を、「外国語科目」という科目群として拡充し、第1類では同科目群から4単位の取得を卒業要件にしたほか、科目として「リサーチペイパー」を設け、第3類では卒業要件にしました。
 このように絶えず見直しを行いつつも、本研究科・学部の教育の目的は一貫しています。それは、第1に、社会における事象や問題を、距離をとって考究する能力を養成することです。ここでいう距離をとった考究とは、個別の事象や問題を、一般的な規範、分析枠組、理論、思想に照らして検討するとともに、一般的な規範・思想等を、個別の事象や問題に照らして再検討することを指します。さらに、社会の事象や問題、規範・思想等を、歴史のパースペクティヴ、異なる社会との比較、および国際的・グローバルな観点の中で、考察することを意味します。
 本研究科・学部の第2の教育目的は、社会における事象や問題、規範・思想等について、相互の共通性と差異を理解し、言語で明確に表現する能力を養成することにあります。そして、異なる観点や意見をもつ人間同士が社会の問題・社会のあり方を議論する中で、議論を見通しよく整理し、創造的にまとめる能力を養成することが必要です。以上のような能力は、ともすれば二項対立の図式により一方向に流れ、あるいはフィルターバブル、エコーチェンバーが形成されるおそれのある社会の中で、重要性を増していると考えられます。

 
 こうした本研究科・学部の研究教育は、様々な連携により支えられ、発展しています。実務の各界との連携、他分野の専門家との学際的連携、さらに、海外の研究者・実務家や海外の研究教育機関との国際連携です。こうした連携の代表例である「先端ビジネスロー国際卓越大学院プログラム」(ABLP)については、特設サイトをご覧ください。
 そして何より、本研究科・学部の伝統の基礎は、卒業生・修了生の皆様とのつながり、および卒業生・修了生の皆様相互間のつながりにあります。本研究科・学部は、こうしたつながりを維持・強化するように努めてまいります。皆様には、ニューズレター等を通じて、本研究科・学部の研究教育の現況を知っていただき、ホームカミングデイ等を通じて、研究教育の成果に触れていただき、さらに、研究教育への参画等により、ご協力をいただけますと幸いです。また、本研究科・学部の研究教育を持続的に発展させるためには、残念ながら財源が不足している実情をご理解いただき、東京大学法学部振興基金等を通じて、財政的なご支援をいただければ大変ありがたく存じます。
 卒業生・修了生の皆様の日頃のご支援・ご協力に感謝いたしますとともに、一層のご支援・ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

東京大学大学院法学政治学研究科長・法学部長
山本 隆司