東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

コラム55:「自分らしくいる」ということ

学習相談室

コラム55:「自分らしくいる」ということ

2020年になってあっという間に3か月、もう1年の4分の1が終わりました。例年であれば、新学期を迎え、気持ちを新たに新生活のスタートを切り、明るい気分で日々を過ごしている方が多いことと思います。しかしながら、今年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、様々な活動・イベントが制限され、外出も自粛要請がなされ、気分が晴れない方が大半ではないかと思います。つい先日、緊急事態宣言が出され、東大も活動制限指針がレベル3に引き上げられました。授業の開始も遅れ、形式もオンラインになるなど、イレギュラーなことが多く、学生のみなさんも日々不安を感じていることと思います。

このような“いつもと違う状態”や“先の見えない状況”に置かれると、なんだかそわそわと落ち着かない気持ちになったり、他の色んなことが心配になったり、いつもより疲れやすくなったりすることはありませんか? 今回は、こんな時期だからこそ、周りの環境・状況に左右され過ぎず、自分に目を向けて自身を大事にしてほしいと考えたため、「自分らしくいること」をテーマにお話ししたいと思います。

 

みなさんにとって、「自分らしさ」、「自分らしくいること」とは何でしょうか。「アイデンティティ」や「(自分)らしさ」という言葉は、日常生活の中でも馴染みのあるものですが、いざ、具体的に言葉にするとなると案外難しいものかもしれません。では、少し質問を変えて、「自分らしくいる」と感じるのはどんな時でしょうか。たとえば、趣味に没頭している時、バイトで接客している時、友人とご飯に行く時・・・などが挙げられるでしょう。そのような「自分らしくいる」と感じる時、みなさんはどんな気持ち・気分でしょうか。――充実感や生き生きとした感じ、温かい気持ち、楽しい気分などを思い浮かべた方がきっと多いことと思います。

 

この、「自分らしくいる」と感じることは、心理学では「本来感(sense of authenticity)」と名づけられており、「自分自身の意思や気持ちに基づき素直に生きていると感じていること」を意味するとされています。そして、研究の結果から、本来感はwell-being、すなわち幸福感を促進するということが明らかになっています。これは、他者や社会からの評価等に自己評価が左右されず、自分で自分をコントロールできている感覚が働くためだと考えられています。また、ありのままの自分を認めてもらえる経験によって本来感の形成は促進され、そうした経験をもとに他者とあたたかい関係を築くことができ、結果的に幸福感にもつながっているとも考えられます。

さて、ここで重要なのは、「自分らしくいる」と感じる時の具体的な内容は関係なく、自分自身が「自分らしくいる」と感じていることが心身の健康にとって大切であるということです。

自分で「自分らしい」と感じる時は人によって様々であることは当然ですが、個人の中でも、場面・環境によって「自分らしい」と感じる時は異なっていると思います(家で自分らしくいると感じる時とサークルで自分らしくいると感じる時、など)。ですので、その時その時において、自分自身の感情や意向に目を向け、それらに一度素直になってみてください。とくに、自分の意向を行動に移すことがすべてではなく、その感情にただ気づいてみることが自分らしくいることにつながります。

やや抽象的な話になってしまいましたが、どうしてもこの不安な状況にばかり目が向きがちな今日ですので、情報収集はしっかりと行いつつ、「自分らしくいる」と感じることの大切さを少し思い出しながら、自分自身に目を向ける時間を作ってもらえたらと思います。

 

 

学習相談室は、掲示板に記載の通り、当面の間対面相談・電話相談は休止となりましたが、メール相談は受け付けていますので、困ったことや不安なこと等がありましたらメールでご連絡いただければと思います。また、みなさんに少しでも早く相談の場を提供できるよう、オンライン面接の準備を早急に進めてまいります。

 

まだまだ先が見えない状況ではありますが、一刻も早く元通りの生活が送れるようになることを祈りつつ、引き続き体調には十分気を付けて過ごしていきましょう。

 

(文責:谷)