研究班
  • 政策システム理論
  • 政権交代班
  • 地方分権班
  • メディア班
  • EU班
  • 科学技術班

EU班(コーディネーター:平島) メンバー

平島健司

平島健司
Kenji HIRASHIMA

事業推進担当者・
東京大学大学院社会科学研究所教授

佐藤俊輔

佐藤俊輔

日本学術振興会特別研究員・
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程


 EUは、加盟国政府が、共同(域内)市場を中心とするさまざまな個別政策を、EU諸機関の働きを通じて相互に共通化させようとする試みを積み重ねる中から生成した「独特の」政体である。それは、国民国家を前提として構想されるいかなる政体とも異質でありながら、凍結された「憲法条約」案の実現が切望されるほどに現実的なものとなっている。
 そのような「独特の」政体においては、複数のレベル(ヨーロッパ、国家、サブ・ナショナル)の公的・私的主体が国家の枠組みを超えて政策ネットワークを構成し、政策の形成と執行に携わる。EUに配置された諸機関とそれらの相互作用の中から出現するさまざまな政策形成パターンや、加盟国政府による執行の局面にまで延びる長い政策の流れ、あるいはEUにおいて政党政治が果たす限定的な役割と裁判所による法的統合の決定的な意義を考えれば、それらのネットワークは、加盟国の内部に展開するものとは全く異質なものと考えられる。
 本巻は、EUにおいて成立した政策ネットワークの特性を、他の政策分野や加盟国レベルの同分野におけるネットワークとの関連において考察した上で、従来のガバナンス論などが必ずしも明示的に扱ってこなかった政策ネットワークそのものの発生・進化のダイナミズムを明らかにする。可変的で多面的なEUの政策ネットワークの中から生み出される政策革新のメカニズムの解明が目的である(EUのいわゆる第1の「柱」を中心に扱う)。