最終更新:2020-12-26
2019年東京大学法学部オープンキャンパス
法学部・法科大学院の学生による模擬授業の紹介
〜コンサートやスポーツイベントのチケットが第三者によって高額で転売される問題について〜
(2019年8月7日 14:00〜15:30に実施)
法学部では、オープンキャンパスにおいて、法学部学生と法科大学院学生が共同して、高校生向けの授業を行っています。2020年度は諸般の事情により行うことができませんでした。2019年度に行った高校生向け授業をご紹介します。
2019年度の共通テーマは、いわゆる「チケット転売」でした。コンサートやスポーツイベントのチケットを、行きたいファンでなく、「転売ヤー」と呼ばれる人たちが集中的に購入してしまい、行きたい人に高く売る、という問題について、どう考えるべきか。法律で規制すべきか、規制すべきでないか。主催者(興行主とも呼ばれます)はどのように売れば問題を解消できるのか。こういったことを考えるのは、とても「法的な」課題なのです。規制すべきかどうかも、もちろん法的な課題ですが、どのような制度・仕組みを作るべきかも、法的な課題であり、それは、国が作る場合でも、民間企業である主催者が作る場合でも、同じです。
幸い、法学部と法科大学院であわせて34名の学生の参加を得ましたので、教室4部屋を使い、225名の高校生を受け入れ、9名ずつの25の班に分かれてもらって、それぞれの班に法学部・法科大学院の学生1名または2名が付きました。4つの部屋ごとに学生から簡単なレクチャーを行ったあと、班ごとに、高校生にディスカッションを行っていただきました。
学生は、4月から7月まで週1回の授業という形で、この日のために準備しており、気合十分でした。しかし、それだけでなく、自分たちは必要以上に目立たないようにし、なるべく高校生の発言を促す役目であることも自覚して、進めているようでした。
実は、「チケット不正転売禁止法」と呼ばれる法律ができ、学生による準備の期間中に施行されましたので、「法律ができたのなら議論しても仕方ない」という声が、学生からチラッと聞こえたことがありました。しかし、そのような法律を作るのが良いことかどうかを考えるのも、法学の役割です。学生も高校生も、それを前提として、熱心に発言していました。
東京が最も暑い時期でしたが、教室にはエアコンが効いて、涼しい中で熱いやり取りが繰り広げられました。
当日の様子を、写真と、高校生アンケートで、さらにご覧ください。
白石 忠志 教授(競争法)
●アンケートの結果
1.学年
2.性別
3.学校
4.学校所在地
※北海道7、東北17、中部・東海35、近畿36、中国・四国20、九州・沖縄30、その他7
5.授業の難易度
6.面白さ
7.法学学習の雰囲気
8.主な感想・意見
・“法”という限られた範囲のみならず、それによって及ぼされる影響まで考慮して物事を決めていくということに興味を強く引かれました。
・自分の意見だけでなく、相手の意見を聞いて知見を広げることができた。より一層東大法学部への興心を深められた。
・一つの課題がすっきりしたと思って、また他方面から新たな問題が生じ、それらを法で、あるいは法以外で規制すべきなのかという根本的なものから考えなければならないのが難しかった。
・今回の議題は、1時間半という時間で行うには少し難しい内容だったかなと思いましたが、内容自体は興味が持てるものだったと思います。
・これまで、転売について悪いことだというイメージをもっていたが、転売の「良い面」があることを知ったことで、これまでより深くこの問題について考えることができた。
・法律は「拘束するもの」という、自由を制限してしまうイメージがとても強かったが、誰もが平等に利益を得られるような世の中を確保する役割を担う点で、必要なものなんだな~と思いました。楽しかったです。
・今回参加させて頂いて普段の授業の雰囲気を感じられてインストラクターの方がやさしく接してくれたので有難かった。
・実際に東大の法学部の方と話すことができ、よい機会となりました。
・チケットの高価転売問題は若い人たちに対して大きな問題だと思う。こんな身近な授業は興味があるだと思いので、学習の雰囲気も感じられた。
・法学にはあまり興味が無く、弁護士などの人だけが行くものだと思っていたけど身近なことを深く考えることができ楽しかったです。
・オープンキャンパスのこの企画を見たとき、とても興味のある企画だったので楽しみにしていました。転売する側のことは考えたことがなかったので、違う視点から考えることも大事だなぁと感じました。
・難しい内容ではありましたが、大学生・大学院生の方が丁寧に説明してくださり、理解を深めることができました。はじめは理系志望でしたが、今回の講義で法学部に興味を持ったので、もっと調べてみたいと思います。ありがとうございました。
・私自身、アーティストのLIVEによく行ったりして、その度に転売について色々思うことがあったので、改めてじっくり学べてスッキリしました‼皆で意見を出し合えたのも楽しかったです。来た時よりも、法学部への興味が増しました‼
・法学部はもっと固苦しいと思っていましたが、実際にはとても良い雰囲気でした!グループの皆と一緒に真剣に議論できて、楽しかったです。
・高校ではできない複雑で興味深い議題について真剣に議論することができて、とても楽しかった。
・グループワークと聞いて少し肩に力が入っていましたが、大学生のみなさんと班員の人たちのおかげで気楽に意見を言えました。ありがとうございました。
・飛び入り参加させていただきましたが、法律を考えて、作るという過程を少しでもかじれたので、良い機会となりました。本当にありがとうございました。