東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

コラム22:問題解決へのステップ

学習相談室

コラム22:問題解決へのステップ

何か困ったことに遭遇した時、みなさんはどのように対処していますか? ひとつの問題を解決するための方法は、必ずしもひとつであるとは限りません。考えられるいくつかの解決方法の中から、「これが一番良い方法だ!」というものを選択することはとても難しいとことです。今回は、私が中高生を対象に実施したライフスキルの授業をご紹介しながら、問題解決までのステップについてお話したいと思います。

 

問題を解決するまでにはいくつかのステップがあります。授業では、「ステップ1:何が問題なのかをはっきりさせる」、「ステップ2:解決方法を2つ以上(思いつくだけ)考えてみる」、「ステップ3:その解決方法を行った場合に起こる結果を予想する(メリット/デメリットで整理)」、「ステップ4:それぞれの方法を比較し、一番良いと思うものを選ぶ」、「ステップ5:実行してみる」、「ステップ6:実行した解決方法を振り返る」という6つのステップで問題解決過程を整理しました。

 

生徒には、「5人のグループに、4つのチョコレートが与えられた」という設定の中でチョコレートをいかにわけるのか、解決方法を考えてもらいました。実際にグループにわかれて話し合ってもらいましたが、グループ、メンバーによって提案はさまざまです。

 

ジャンケンで文句なし、勝った4人がチョコレートを食べる。食べられない人が1人になるのを避けるため、食べるのはジャンケンに勝った2人だけにする。負けた2人が半分ずつにして全員が食べる。先輩が優先、もしくはレディーファーストでわける。グループにわだかまりを残したくないので、誰も食べない。お金を出しあって新しいチョコレートを買ってくる。誰かが我慢したり、優遇されたり、余計な出費がかかったり・・・それぞれの選択には、いろいろなデメリットがあり、そしてメリットがあります。何をメリット・デメリットとするのかも、人によって、グループによってまちまちです。みなさんはどんな方法を選択しますか?? メンバーみんなが食べることを優先するのか、それぞれの運に任せるのか、余計な出費を覚悟するのか。

 

この授業では、問題解決の過程を振り返ることを通して、100%みんなが納得する解決が難しいこと、お互いの意見を尊重し合いながら、自分の考えを伝え、相手の考えを聞くことが大切であることを生徒に感じてもらいたいと思い実施しています。メリット・デメリットを整理しながら多様な考えや可能性を想定することは、集団としてではなく一人で問題解決に取り組む際にも役立つと思います。第三者に意見を聞いてみたり、情報をもらったり。必要であれば、自分の価値観を振り返ってみることも有効かもしれません。

 

みなさんが実際に遭遇する問題は、チョコレートの課題のように単純なものではないことがほとんどです。事情が複雑にからみあっていて、何が問題であるのか明らかにするステップ1から足踏みしてしまうこともあると思います。このステップで進めれば必ず満足のいく解決方法を選択できるというわけではありませんが、みなさんの問題解決の際に、ここでの振り返りが少しでも参考になれば嬉しいなと思っています。困ったことに遭遇したとき、冷静に考え、選択して良かったなと思える解決方法と出会えるように、いろいろな可能性を考えながら解決方法を模索されてみてはいかがでしょうか。

 

(文責:鴛渕)