東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

2022年サマースクールレポート その3

法曹養成専攻

法学部4年 佐藤 心哉

 

 

私は大学四年生の夏にサマースクールに参加しました。非常に多くの学びを得ることができ貴重な経験でしたので、広く多くの方に来年度以降の参加を検討して頂く契機になればと思い、本レポートを執筆しています。

主としてサマースクールの受講を検討される方にお読み頂くことを念頭に、受講者目線でのサマースクールの感想を述べたあと、サマースクールへの参加をお勧めできる理由を2点に絞りご紹介します。

 

私の参加した年のサマースクールは、”Introduction to US law”がテーマであり、敢えて大雑把に申し上げれば、統治機構・行政法・担保物権法・民事訴訟法・租税法・経済刑法に関する多様なトピックを各先生がご教授下さいました。

私は帰国子女でなく海外経験も乏しいため英語力自体に不安がありましたが、各先生が事前に共有下さる予習資料は十分こなせるような量・難易度でしたし、授業も先生方がおそらく意識的にゆっくりと平易な英語でお話し頂いたため、授業の大筋は問題なく掴むことができました。また、私は学部で英米法を履修していなかったため予備知識にも不安がありましたが、シラバスで入門的な米国法を解説する日本語の本が参考図書にあげられていたこと、サマースクールの冒頭で日本人教員による英語でのオーバービューがあったこと、先生方も生徒に全く知識がないことを前提に授業をしてくださったことから、全体を通じ知識面でついていけないと感じることはありませんでした。更に、授業で分からなかったところは勿論ありましたが、他の学生に授業後質問することや、オフィスアワーの時間に直接先生に質問することで解消できました。このように、私のような初学者でもついていける形でサマースクールは進められ、受講前に感じていた不安は杞憂であったと感じています。

 

サマースクールへの参加をお勧めできる理由の1点目は、英語への抵抗が少なくなる点です。先述の通り私は海外経験が皆無で、また普段の法律学習は基本的に日本語で出来ますから、自分の英語力への自信があまりありませんでした。しかし、授業の予習を通じて法律特有の語彙や文章運びに慣れたこと、授業において新規の知識を英語のまま理解し疑問点を英語で質問することを通じて、次第に英語自体はそれほど難しいことではなかったのではないかと驚くほど抵抗が少なくなりました。その結果、サマースクール受講後も、例えば授業で紹介される参考文献や教科書・論文等で引用されている文献が英語であったとしても、それほど抵抗なくアクセスすることが出来るようになりました。

2点目は、外国法を勉強する楽しさや意義を体感できる点です。参加前はあまり意識していませんでしたが、日本と異なるルールが一定の合理性を持って他国で運用されていることを学ぶのは、それ自体として非常に知的に面白いです。また外国法との相違点を比較することで、どこからが政策判断を伴ったルールなのかに気づきやすくなると共に、現在のルールを所与のものと考えない姿勢が培われたと思います。例えば、Mooney教授にオフィスアワーで質問させて頂き、統一商事法典(UCC)第9編の担保制度と比較したことで日本の譲渡担保制度が特徴的であることに気づくことが出来ました。

 

このように、本サマースクールは私にとって非常に貴重な経験でした。最後になりますが、コロナ禍にも関わらず厳重な感染対策を講じた上で、対面でのサマースクールの開催に尽力下さった先生方、事務局の方々に心より感謝申し上げます。