東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

法科大学院のご紹介

法曹養成専攻

法科大学院のご紹介

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    宍 戸 常 寿
(法曹養成専攻長)

本法科大学院は2004年に創設された後、2024年3月までに3800名近い修了生を輩出しました。その多くの方々が、私たちの目指す「国民や社会に貢献する高い志と強い責任感・倫理観を持ち、先端的法分野や国際的法分野でも活躍しうる、優れた法律実務家」として各界で活動しています。本法科大学院が今日まで歩んでくることができたのは、その創設に尽力された先達、またその後も惜しみないご協力を頂いてきた諸先輩や関係者の皆様のご支援の賜物であり、ここに心より感謝申し上げます。

本法科大学院の創設以来変わることのない特徴は、その教育プログラムの卓越した水準にあります。本法科大学院で授業を担当している教員は、いずれも、それぞれの分野で卓越した実績を挙げ、指導的な役割を果たしている研究者、実務家であり、これらの教授陣が、その豊かな学識と経験に基づき、また、不断の努力を重ねて、高い水準の教育を展開しています。そうした努力の一環として、教員相互の授業参観や定期的に開催される授業情報交換会が挙げられます。

教育プログラムとして、基本的な法律科目にとどまらない多彩な科目が展開されていることはもちろんですが、本法科大学院が特に力を入れている点として、
変化の激しい社会において生起するさまざまな法的問題に適切に対処し、必要に応じて大胆な制度改革をも提言することのできるような知的基盤を育成強化する観点から、基礎法学に属する科目を豊富に提供していること
既存の日本の法制度のみにとらわれることなく、国際的な視野から先端的な問題に取り組む能力を養う観点から、国内外の教員による英語での授業や比較法の授業、夏季の「グローバル・ビジネスロー・サマープログラム」といった多様な学びの機会を用意していること
などが挙げられます。それと同時に、
東京大学出身の法曹の方々からなる「東大法曹会」のご協力による、法律事務所での短期トレイニー制度
修了生を中心とした国際機関や海外法律事務所への海外派遣プログラム
法学研究を志望する学生に向けた講演会や外国語講座
など、カリキュラム外での教育内容も充実させております。卒業後の進路として、実務法曹としての活躍の場の多様性に関心を持ってもらうとともに、他方では将来の法学研究及び法曹養成の担い手の育成にも、力を注いでいます。

本法科大学院では、授業の枠を超えて学生同士が自主的に議論しあう様子や、教員が教室や廊下で学生に取り囲まれて質問を受けている姿が、日々みられます。そのような日常が、学生のより深い学びにつながっていることはもちろん、学生の鋭い質問から教員が刺激を受け、考察を深めることも珍しいことではありません。このように学生と教員とがともに切磋琢磨する「場」としての意義も、本法科大学院の特筆すべき特徴です。学生が主体となって運営され、学生によって執筆された質の高い論文が掲載される法科大学院ロー・レビューも、このような学びの「場」によって培われたものといえます。

本法科大学院の2024年3月までの修了生3796名のうち2874名が同年までに司法試験に合格しており、これまでの累積合格率は75.7%に上ります。司法試験が実務法曹への出発点を意味する以上、こうした数字を本法科大学院の「実績」として挙げることもできるかもしれませんが、私たちが目指しているのが司法試験の合格だけではないことは、教員が折に触れて学生に強調していることです。むしろ、修了して10年、20年経った修了生が「東京大学法科大学院で学んでよかった」と心から感じられる教育をすることこそが、私たちが目指しているものです。めまぐるしく、そして激しく変遷する社会・経済状況の中で次々に生じる新たな課題に取り組み、優れた法律家として国内外で社会に貢献していくためには、現在の法制度を単に所与のものとして受け止め、その知識を習得するにとどまらず、既存の法制度や規律を自分なりに再構成しながら、その背後にまで立ち入って深く理解し、これを踏まえて現実の事象の中の問題を発見し、法的に分析し、解決を見出すための理解力、法的分析力及び創造的思考力が不可欠です。本法科大学院での学びは、こうした豊かな「法曹としての基幹能力」と多面的な視野とを備えた修了生を法曹界に送り出していくことができるものであると確信しています。

法曹養成制度もまた、改革の波に洗われています。2020年には法曹コース経由での法科大学院への進学が始まり、また、2023年には学生が法科大学院の在学中に司法試験を受験できるようになりました。司法試験のCBT化についても検討が行われています。しかし、どのように制度が変わったとしても、「国民や社会に貢献する高い志と強い責任感、倫理観を持ち、国際的にも、また先端分野においても活躍できる高い水準の法律家を生み出す」という私たちの基本理念には、変わりがありません。この基本理念のもと、私たちは、1つ1つ着実に制度の変更や環境の変化に対応し、成果を上げてきたと自負しております。
本法科大学院という学び、切磋琢磨、そして交流の「場」は、在学期間にとどまらず、修了後も続く世代を超えたコミュニティとして生き続けています。創設20周年を迎え、本法科大学院は、修了生の方々によって構成される「東京大学法科大学院同窓会」との連携を強化していきます。「東大法曹会」をはじめとする法曹の方々、法律事務所、機関・企業のみなさまからの温かいご支援、「東京大学大学院法学政治学研究科・法学部運営諮問会議」からのご助言などを得ながら、本法科大学院は自らに求められる役割をより一層果たすよう、努めてまいるつもりです。皆様におかれましては、本法科大学院への一層のご支援、ご鞭撻を、どうぞよろしくお願いいたします。

「教育の理念及び目標」と「養成しようとする法曹像」について

教育の理念及び目標

国民や社会に貢献する高い志と強い責任感・倫理観を持ち、先端的法分野や国際的法分野でも活躍しうる、優れた法律実務家を養成することを目的とする。

養成しようとする法曹像

・「国民の社会生活上の医師」として、法律問題に表れた市民一人一人の悩みを真摯に受けとめ、その信頼できる相談相手となり、問題の解決を助ける使命感と専門的能力を備えた法曹を養成する。

 

・法の体系・理論・運用に関する基礎的・応用的知識を十分に習得するのみならず、それらを複眼的に理解したうえ、法律問題や法の課題を解決するために、自らの思考行動を発展させることのできる法曹を養成する。

 

・法の問題をその背景である人間や社会の問題とも関連させて、的確に把握したうえ適切な解決を図ることのできる、広い視野と鋭い分析力をもった法曹を養成し、また、社会経済のグローバル化・情報化によって急速に発展している先端的・国際的法分野においても活躍できる法曹を養成する。

Q1:1クラス当たりの学生数や授業の進め方など法科大学院の授業の実情について教えて下さい。
A:基本的な科目についてはおおよそ60名で構成されるクラスに分けて授業を実施しています。ほとんどの授業は、双方向(対話)式で行われますので、受講者は予め課題について十分に予習して授業に臨むことが求められます。
Q2:外国語で行われる授業がありますか。
A:コロンビア大学及びミシガン大学との提携による派遣教授やアメリカの他のロースクールの教授又は実務家を招へいして学期中に実施する「現代アメリカ法」、日本の実定法を英語で表現し論ずる「英語で学ぶ法と実務」、夏休み中に合宿方式で集中的に実施されるサマースクール(「グローバル・ビジネスロー・サマープログラム」)があります。これらの授業は、原則として英語で行われます。
Q3:法科大学院では司法試験対策あるいは受験準備のサポート体制をとっていますか。
A:本法科大学院では、すぐれた法曹として求められる法制度や社会に関する理解力、問題発見能力、法的分析能力、創造的思考力などの理論及び実務基礎にかかる基幹的能力を身につけてもらうための教育を行うものであり、司法試験に合格してもらうこと自体を教育目的とは考えていません。実際にも、司法試験の受験対策的な授業・補習やサポート体制をとることはしていません。しかし、本法科大学院で提供されるカリキュラムを確実にこなしていけば、自ずから司法試験にも十分対応することができるものと考えています。
Q4:法学未修者として入学後、在学中に法学既修者のコースに変更することはできますか。また、その逆はどうですか。
A:入学後においては、法学未修者から法学既修者へも、法学既修者から法学未修者へも、コースの変更はできません。
Q5:私は社会人ですが、現在の職についたまま入学して学習することは可能でしょうか。
A:会社や官公庁などに在職のまま入学することも可能です。ただし、法科大学院での勉学に専念していただくために、会社や官公庁などに在職のまま入学する場合には、入学手続に際して、在学期間中学業に専念させる旨の勤務先の長の証明書を提出することが必要となります。
Q6:入学金・授業料免除や各種奨学金の受給の実情について教えて下さい。
A:こちらをご参照ください。
Q7:法科大学院において研究者教員と実務家教員との連携・協力の下に行われる教育とは具体的にはどのようなものですか。
本法科大学院では、研究者教員、実務家教員の区別を問わず、国内外における多様な実務経験や専門的知見を有し、かつ学術的にも高い水準の活動を続ける教員が多数在職しています。カリキュラム内では、主として法律実務基礎科目やビジネス・ロー関係科目について、研究を主体とする教員と実務の背景を有する教員の連携・協力により多数の授業が行われています。教材の準備から授業自体での教員相互の質疑、共同開講など、連携・協力の形態は科目の性格に応じて多様です。このほか、狭い意味でのカリキュラムや教員の枠を超えた取組みとして、実務家を含む国内外の講師とともに学び交流するサマースクールプログラム、未修者指導への本学出身法曹の積極的協力などが挙げられ、学生の学びの様々な場面に研究者と実務家との連携・協力を活かしています。
Q8:法科大学院入学後の学習環境、とりわけ自習室の実情について教えて下さい。
A:法学政治学研究科・法学部では研究・教育・学習等の環境強化・整備のため、平成23(2011)年度から正門右手の法学部3号館・4号館およびガラス棟4階の増改築工事を実施し、平成24(2012)年9月に関連工事が完了しました。今回の増改築工事により、従来から運用している第2本部棟7階第2・3自習室(約200席)に加え、新たに4号館1階~3階に自習席が増設(約450席)され、法科大学院在学生一人ひとりに1席の自習机が配置されています。自習室は、午前7時から午後10時30分まで利用が可能で、年末年始を除いて、土曜日・日曜日も開室しています。同時に、模擬法廷教室が設置され、また、法科大学院関連書籍が法学部研究室図書室に集約され、それぞれ本格運用を開始しています。令和2(2020)年3月に第2本部棟7階を返還したことにより、4号館4階に自習席が移設されました。
Q9:法科大学院修了後、研究者となるために博士課程に進学したいと考えていますが、法科大学院ではそのような学生のための教育を考えていますか。
特定の研究テーマについて教員の指導を受けながらリサーチペイパー(1万2000字以内が目安で、2単位が与えられます。)を書いたり、とくに博士課程への進学希望者など研究者を目指す学生が教員の指導を受けながら研究論文(10万字以内が目安で、6単位が与えられます。)を執筆する制度があります。これらのほか、多様な演習が開設されていますので、研究者を志向する学生の関心にも応えることができるでしょう。
Q10:法科大学院には海外の大学等との交換留学制度がありますか。
A:現在のところ、交換留学制度や単位の互換制度はありません。
Q11:法科大学院には弁護士事務所等へのエクスターンシップなど実習の制度がありますか。
A:現在のところ、エクスターンシップは実施していません。本法科大学院では、在学中には法曹に求められる理論及び実務基礎についての基幹能力を確実に身につけてもらうことが何よりも肝要だと考えており、在学中に現場での実習の経験をすることが法科大学院の教育にとって不可欠なものとは考えていません。もちろん、本法科大学院でも、多数の法律実務基礎科目が提供されており、その中には模擬裁判や法律相談クリニックなど実習に近い内容の授業科目も含まれています。
なお、東大法曹会の協力を得て、毎年、中小法律事務所による短期トレーニーを実施していますが、こちらは希望者のみ参加のプログラムであり、単位は付与されません。
Q12:カリキュラムを見るとジェンダーに関する授業科目が見当たらないようですが、「ジェンダーと法」を課題とした授業科目の新設は考えていないのでしょうか。
A:ジェンダー問題自体をタイトルとする授業科目は現在のところありませんが、関連する各授業科目や演習などの中で、必要に応じて取り上げられることになると思います。

資料(2024年4月 現在)

教育課程連携協議会 委員(2023年3月 現在)