東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

2021年サマースクールレポート その3

法曹養成専攻

2021年サマースクールレポート その3

 

法科大学院2年

水野挙徳

 

私の参加経緯の第一は、競争法への関心の高まりにあります。私は前期に白石忠志教授による競争法の授業を受講し、競争法のもつ独特の法規律や理論の普遍性・学際性、現代的注目度の高さ等に対し魅力を覚えました。その中で本プログラムがEU・米国競争法を扱うと知り、授業で日本独禁法の比較対象として度々言及のあった欧米競争法についても短期間で理解を深める恰好の機会と考えました。

 

第二は、英語を用いた法律実務の準備の足掛かりを得る目的です。私は、受験英語に始まり、継続的な英語学習や多くの国際的経験を通じて、英語を用いて活動をするのに必要な基礎能力および度胸は備わってきたと自覚しつつありました。そこで今後は、専門知識を英語で習得することで、培った能力や度胸を法律実務に活用する段階に進もうと考えていました。それにあたり、本プログラムを通じて英語で直接吸収したEU・米国競争法の知識や問題意識が、将来的に競争法実務で英語を用いる場合に役立つことを期待しました。

 

各授業は、EU・米国競争法の基礎について、欧州・米国のそれぞれ最前線で活躍する弁護士や大学教授、競争当局職員の先生方が講義するものでした。内容は導入的でありながら密度が高く、基礎理論や歴史、古典的事例から最先端の立法・紛争事例やコロナ禍の影響まで広く網羅され、EU・米国競争法の全体像をつかむことができたように思います。特に、今日最も熱い論点であるGAFA等デジタルプラットフォームの行為についての競争法上の問題は多くの先生方が重点的に取り上げており、欧米の第一線の研究者による先端的議論の状況が垣間見えて刺激的でした。

 

参加にあたっては、積極性を重視しました。プログラムは完全オンラインで、標準的履修形態に従えば導入編・EU編・米国編の計10コマを録画視聴し、最後の3コマを総集編としてライブ双方向型で受講することが想定されていました。しかしそれでは受動的でもったいないと思い、ライブ収録のボランティア受講者を募集していた導入編・EU編の全てにライブ参加し、できる限り積極的に発言・質問するよう努めました。確かに、対面合宿形式のように場を共有しその空気感全体を味わったり、授業を離れてのコミュニケーションを通じて先生方や他の国内外の参加者と親睦を深めたりすることは叶いませんでした。しかし、集中して予習や授業に取り組み、理解不足を臆することなく発言し教示をいただいたことにより、授業の機会は最大限に活用できたと感じます。ライブ講義のなかった米国編についても、録画視聴形式の利点を活かし聴解できなかった箇所を聴き直すことで、理解の深化に繋がりました。

また総集編は、班別に事例問題の検討を行わせ、その成果を全体で発表させて議論を深める形で、オンラインでも全員参加型の授業が実現できるよう工夫されていました。事例問題は米国編の先生方が自身の法科大学院の試験で実際に出題された難しいものでしたが、グループワークや全体の議論を通じて能動的に意見を述べ、また他の参加者の見解を聴く中で、実践的思考能力が鍛えられたように思います。

 

全体を通して、オンライン形式ゆえの交流の少なさは残念であったものの、能動的参加の機会を捉え、またオンラインならではの受講形態の柔軟性を利用することで、合宿形式とはまた違った学びや楽しみを得ることができたと感じます。来年度以降の開講形式がどのようなものであれ、参加の価値がある充実したプログラムであると思います。