東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

2022年サマースクールレポート その4

法曹養成専攻

2022年度サマースクールレポート

 

総合法政専攻修士1年 鮑妙堃

 

 

正解のない問いに満ちた世界で、法学に身を投じようとする法学生にとって、大事なのは一体何でしょうか。こういった疑問を抱えている私は答え探しに東大に入り、今回のサマースクールで一つの可能性を見つけたように感じています。

今年のサマースクールのテーマは「Introduction to U.S. Law」であり、アメリカ法の全貌から細かい分野に関する法規定まで、とことん教えてもらえる構成になっており、グローバルな視点から法律への理解を深める絶好の機会なので、ぜひとも受講してみたいと思い、私は参加を決めたわけです。

8月という猛暑の中、(母国語ではない)英語の授業を一週間も受け続けることは大変だろうと想像していたのだが、実際に体験してみて、決して楽ではないが、毎日充実していて参加して本当に良かったと感じています。

そんな中、私の最も関心のある法分野は「federalism and constitution」という憲法やアメリカの連邦制度を紹介するものであり、自分は大学時代において、アメリカ憲法に関する授業を傍聴した経験がそもそもあったので、今回のアメリカ現地の先生のご説明でより理解が深まったように思います。それに、税法という昔の自分が決して興味がなく、多少苦手だった科目も、先生の大変分かりやすいご説明で、興味をそそられたのです。他にも、ほとんど聞いたことがなく、実務で手掛けたはずもないFCPAの規定とか、様々な法律の講座が用意されており、この一週間、私は蜜蜂のように只々知恵という名の花粉をむさぼっていたのです。

そこで初めて、好奇心を持ち続けることこそ、法律を勉強するうえで最も価値のあることではないかという風に、私が考えるようになりました。法学者であれ、実務家であれ、日々違う仕事がやってきます。そんな中、いろんな分野の知識に好奇心を持っていなかったら、「なんて大変な仕事なんだよ」と苦労するだろうと私は思います。逆に好奇心さえ持っていれば、毎日取り組む内容が違うものであっても、「これって何だろう」ってやはり興味をそそられるのです。

好奇心というのは何かというと、結局は世間に対する興味ではないでしょうか。特に法律の世界においては、多分野の利益衡量が肝心なテーマであり、法律の勉強をする以上、様々な分野の知識や実態に好奇心を持って初めて、法律の道を歩み続けます。そしてさらに、一つの国の法律にとどまらず、なるべく多くの法律に触れてみる、という今回のサマースクールのような授業がなぜ必要かと言えば、新しい価値とはシステムとシステムの間に、相違が生じるところに生まれるからであり、山登り好きな私に言わせれば、富士山の景色を一番エンジョイできる方法は、富士山を登るだけでなく、周辺の他の山に立って視点を変え、そこで初めて富士山の全貌が見えてくるのです。法律を勉強することも、結局それと同様ではないかというのが、今回のサマースクールで気づいたことでした。

今回は、日本若しくは世界の法学が向かっている方向の波頭に立つような、多国籍の先生方が集まって下さっておりました。それゆえ今、振り返って、最先端の知恵を身に着けていくために、このコースを取ったという自分の選択は、間違いではなかったと私は強く思います。

本当にありがとうございました。