東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

2023年サマースクールレポート その3

法曹養成専攻

法学部三年に在籍しております、工藤と申します。本年度の東大法科大学院サマースクールに参加いたしました。

はじめにこちらの演習の参加を決めた理由としては、なるべく多くの演習に出席して少人数授業を楽しみたいというある種不純なものでした。ですが、実際に受講してみると、商法・会社法研究のダイナミズムを肌で感じられるだけでなく、講師の先生方や他の学生の皆さんとの出会いに恵まれたプログラムとなりました。

本年度はグローバル会社法がテーマとのことで、多くの先生方はCorporate Purpose、ESG投資、shareholder stewardshipなどの、会社と株主、そしてそのほかのステークホルダーとの関係を問い直すような議論について扱われました。その中でも印象深かったのがスチュワードシップ・コードの国際的波及に関する研究です。予習の際に、一人の先生がスチュワードシップ・コードに関して統計言語処理を用いた分析をなさっているのを拝見して、これまで同様の手法を用いた研究を見たことがなかったので非常に驚きましたが、それ以上に先生に質問に行った際に先生が研究拠点になさっているイギリスでは比較的一般化しつつある研究手法であると聞いて衝撃を受けました。さらに、他の先生の授業の中で、この先生の研究が取り上げられ、英語を公用語としない国を対象とする場合はより研究手法を精査する必要があること、実際日本のスチュワードシップ・コードにおいて日本語で書かれた元のコードとその英訳とが意味内容において完全には一致しないことを指摘した研究があることを教えていただきました。このようにそれぞれの先生が他の先生方の研究・授業内容を意識して折に触れ先生自身の考えを述べていらっしゃったため、会社法研究の国際的なつながりの一端を垣間見ることができました。

思いがけない出逢いにも恵まれました。Sセメスターにおいて出席した英米法演習において、アメリカ証券取引法の大家であるMeritt Fox先生の授業を拝聴する機会に恵まれたのですが、北京大学から本プログラムに講師として参加なさっていたSang Yop Kang先生にふとその授業のことを話したところ、Fox先生がKang先生のS.J.D.時代の指導教官だったことを知らされました。その後、Fox先生の授業を振り返る中で湧き出てきた疑問などについてKang先生に質問することができ、証券取引法に関する理解・関心を深めることができました。

また、授業外では、社会人の方々に法実務の観点からみた法概念の話を教えていただいたり、今後の進路の相談に親身に乗っていただいたりしました。加えて、大学院生の方々からも気にかけていただけて、様々なお話を伺う中で今後どのような進路を取るかについて、考えを深められました。また、留学生の方々とも、法学教育の違いといったやや硬い話題から自分の街でおすすめの食べ物といった耳よりなトピックまで色々なことを話すことができ、楽しい時間を過ごすことができました。

最後に、このような貴重な機会を頂けたことに心より感謝申し上げます。