東京大学大学院法学政治学研究科・法学部

2024年サマースクールレポート その1

法曹養成専攻

2024年度サマースクールについて

 

法曹養成専攻長 宍戸 常寿

 

 

東京大学法科大学院は、国際的に活躍できる法律家の育成を目標の1つとしており、その目標に向けたプロジェクトのひとつがサマースクールである。本プログラムは法科大学院が開設された2004年以来、コロナ禍で中止を余儀なくされた2020年度を除き毎年開催されている。20回目である2024年度は、8月3日(土)から8日(木)までの5泊6日の日程で、三井物産人材開発センター(熱海市)をお借りして実施した。豊かな自然に囲まれた環境のもと、充実した施設を全館借り切っての合宿を通して、英語で学び、多様な参加者がお互いに交流し、親交を育む絶好の機会となった。

 

参加者は、東京大学法科大学院の学生23名、総合法政専攻の学生5名、法学部の学生6名に加え、海外からは北京大学、ソウル国立大学、シンガポール国立大学、オーストラリア国立大学、ベルギーのルーヴェン・カトリック大学、復旦大学からの学生計17名、国内大学の学生および企業法務部や法律事務所に勤務する社会人19名の計70名である。講師は、アメリカ、ヨーロッパ及びアジアの著名な大学教授や弁護士6名をお招きした。授業のテーマは年度によって異なるが、今年度は、「Global Trends in Competition Law & Policy」とし、米国・欧州・中国・日本のそれぞれの国における最新の動向を踏まえて、様々な角度から問題を取り上げた授業をしていただいた。

 

参加者は、1日目の正午前に現地に到着し、オープニングセレモニーの後、昼食を挟んで、さっそく同日の午後から、今回のテーマの全体を鳥瞰する授業と、各講師による個別の授業が開始された。各講師による授業は、各20数名程度の少人数編成による3クラスに分けて実施された。1日目の夜にはウェルカムパーティが開催された。その後、5日目の午後までに、原則として午前は1コマ、午後は2コマ、10分の途中休憩を含む115分の授業が各クラス計13コマ行われた。締めくくりは、最終日の午前10時から午後1時まで実施された試験である。試験問題は全講師から英語で出題され、英語での解答が求められ、これに合格すると2単位が認定される。試験終了後、午後2時からフェアウェルパーティが開催され、終始なごやかな雰囲気の中、参加者が、別れを惜しみつつ、将来の再会を誓う姿がここかしこに見られた。

 

サマースクールの期間中も、食事の機会、また休憩時間など、参加者間、また教員も交えての交流や議論が随所に見られたことは、同一の施設で6日間にわたり寝食を共にする合宿形式での開催の良さが発揮されたものといえる。こうした交流を通じて、東京大学法科大学院からの参加学生はもちろん、海外からの学生や社会人の参加者からも、大いに刺激を受けたとの感想が聞かれたところであり、このサマースクールでの多くの出会いが、これからの末長い交流のきっかけとなることが期待される。

 

サマースクールは、東京大学法科大学院の学生にとって、世界が広く多様であることを知る絶好の機会であると同時に、外国からの学生や社会人の方々に、東京大学法科大学院を知っていただく貴重な機会でもある。東京大学法科大学院としては、今後とも長期的な視野から、このサマースクールを大事にしていきたいと考えている。なお、2019年度から、法学部教育の国際化の一環として、サマースクールを法学部の学生にも開放しているが、今年度は上記のとおり、6名の参加者を得た。サマースクールが引き続き、法科大学院・法学部の学生が国際的な視野に立って、共に学び、考える機会となることを大いに期待している。

 

サマースクールは大規模なプロジェクトであり、今回も、多方面の方々のご厚意・ご尽力があってはじめて実現できた。特に今年度からは、渥美坂井法律事務所からご支援を頂いたことに、深い感謝の意を表したい。招聘に快く応じ、遠方から来日され、貴重な数日間を学生とともに過ごして下さった講師の方々、今年も優れた学生を参加させて下さった海外の各大学の関係者の方々、ご多用のなか貴重な時間を割いて参加して下さった社会人の方々を含め、お世話になった全ての皆様に厚く御礼を申し上げる。また、企画段階から万全の体制で準備を進め、実施期間中は現地に常駐して運営を支えてくれた本学の教育支援室、ビジネスロー・比較法政研究センターをはじめとする事務スタッフの尽力なくしては、全ての日程を滞りなく終えることはできなかった。